弱肉強食勇者
魔王の斬撃が俺の左腕を肩から切り飛ばした。血を筋力で止めて戦う。この程度では俺は負けない。俺の底力見してやる。
「痩せ我慢はいい、早く降伏したまえ勇者」
魔王はゴミを見るかのように見下しながら言った。魔王は漆黒の鎧を纏い、黒いオーラを放つ魔剣を持っている。
「降伏したら侵略行為をやめるのか?」
聖剣を魔王に向け俺は確認した。
「ハッハハ、バカを言え、降伏してあるのは安らかな死だけだ、俺を煩わせてただで済むわけがなかろう」
「ハッハハ、降伏なんてするわけないだろ、魔王に降伏する勇者がいるかよ、魔王はな、嘘をつき人を騙す狡猾な奴だって相場が決まってんだよ」
俺は左肩から血を垂れ流しながらいった。正直血が足りない筋肉で止血したとはいえ、切られた瞬間に吹き出てしまった。クラクラするぜ。
俺は魔王に斬りかかり、剣と剣がぶつかり火花が飛ぶ。
「その程度か勇者、まるで赤子の力よの」
「魔王、その余裕打ち砕こう」
と俺は言った。しかし魔王の力凄まじくまるで城壁に斬りかかっているようだ。
「なぜ世界を平和にしたいのだ、勇者よ、私に支配された方がより優れたものが群れることなく、劣っているものを力でねじ伏せることができるのだぞ」
「魔王の作る野蛮な弱肉強食よりも、平和な世界で余裕を持ったり、優しい人たちが虐げられることを減らせるから俺は戦うのだ」
「なぁ、勇者よ、この世界は退屈ではないか?私が退屈だと微塵も思わない世界に変えてやろう」
と魔王が言う。強烈な圧で俺を吹っ飛ばした。
「退屈?退屈に決まってるだろ、じゃなきゃ魔王なんかと戦ってはいない、退屈だからこそできることとやらなくていいことがあってそこに優しさが生まれるのだ。虐げることができても、ねじ伏せることができてもやらなくていい世界がいいんだ」
俺はそう言い、対戦を立て直し魔王に突っ込む。剣と剣が何度もぶつかり合う。
「ではお前はなぜ魔物を虐げ、ねじ伏せる?」
「それは大切な人に危害が及んだり、魔物に虐げられる人々を見過ごすことはできないからだ」
「魔物だって人を食わなきゃ腹が減るのだそ、勇者の考えは思いやりが足りなくないか?」
魔王は狡猾にそう言った。
「人を食わせることはできない。人しか食えないのなら魔物は滅ぶしかない。悪いが俺は俺のために人を優先する」
「ハッハハ、ついに本性を見せたな勇者、それでいい、強者が弱者を抹殺するそれがいい」