勇者ゼルの冒険4
俺とクレナは最北にある魔城を目指し歩みを進めた。
「ここ三年で魔物の被害が増えたのよ」
クレナは魔物を倒し俺に言った。
「どうして三年前に増えたの」
「三年前に魔王が異端教会の手によって復活しからよ、ゼルはそんなことも知らないで戦ってたの?」
「うん、異世界転生してきたもので」
「そうなの、数奇な人生を歩んでるのね」
「にしても魔物が多いな」
俺は獰猛なダークウルフを剣で薙ぎ払いながらいう。
「どうやら魔城に近づこうとすると魔物が寄ってくるみたいなの」
「そうとう過酷な旅になりそうだな」
「なんとかなるわ」
クレナは杖から吹雪を出しモンスターを次々と凍らせた。氷魔法フリーザだ。
俺は強い女性に憧れていたので告白することを決めた。
「クレアの強さに敬服しました、結婚を前提にお付き合いしてください」
俺は告白した。
「無理よ、あなたみたいなしがない冒険者と付き合うことはできないわ、せめて魔王を倒し英雄王にでもなることね」
俺は振られた。魔王を倒すことが前世でいう高学歴や大企業、公務員に就職するということなのか。俺はこの辛い現実で無職だった頃を思い出した。
そこで仏陀の考えも思い出した。望むから苦しむのだ。彼女を作りたいと望むから苦しむのだ。望まなけば振られても悲しいだけで苦しむことはない。
「わかったよ、クレナ」
俺は悲しい気持ちになり答えた。
「今は恋愛より魔王を倒すことに時間を割きましょう」
クレナがそう言って気を遣ってくれたが余計恥ずかしくなった。
俺が振られた時木を薙ぎ倒し何かがこっちに向かってくる。そいつは頭が三つあり狼のような体躯でとても巨大でまさにケルベロスそのものである。
ケルベロスは俺たちに炎を吐いたがクレナが氷魔法で壁を作り防いでくれた。
「助かった」
「ケルベロスは厄介な相手ね、ゼル作戦を考えましょ、まず私が氷魔法でケルベロスの気を惹きつる、その隙に後方から剣技を叩き込んで」
「わかった」
「アイスグラベル」
クレナは氷の壁から飛び出し杖から氷のつぶてを飛ばした。それはケルベロスの頭に命中した。ケルベロスはクレナに注意を向けた。 その隙に俺はケルベロスの背後に回り込み、ケルベロスの足を切り落とした。
しかしすぐに足が生えてきた。さらに首が伸び俺とクレナは瞬く間に咥えられてしまった。牙が身体中に刺さっていることを感じる。身動きが取れない。クレナは必死にもがいている。
俺はどうなってもいいという一心で全ての魔力を解き放った。俺を加えていた頭を消し飛んだ。
さらにその魔力を剣に収束させて放つ。
「パージライトニング」
剣から落雷のごとく聖なる光がケルベロスに命中し消し飛ばす。
俺は全ての魔力を使い果たし気を失った。