炎座右衛門

物語を作ってます

勇者ゼルの冒険1

 ゾンビを袈裟斬りで一途両断する。しかしゾンビは片腕で這うようにして俺に向かってくる。緑色の皮膚と白い骸骨と臓物で構成されたそれは吐き気を催す。うめき声がそこらじゅうから聞こえゾンビの数の多さを認識する。

 俺はたたみかけるように浄化の魔法を使った。「パージ」魔法の発動と共に片腕ゾンビは灰と化した。パージは弱った敵にしか効かないがゾンビを倒すにはこれと聖水しかない。

 そういえば異世界に飛ばされてからモンスターと戦ってばかりだ。そして唯一使える魔法がパージだ。なぜかこの世界にはアンデットのモンスターが多く討伐依頼が無数に存在して前世で無職の俺でも野垂れ死ぬことはなさそうだ。

 現世では誰からも必要とされなかった。さらに無慈悲に虐げられて生きてきた。なぜ人は虐げるのだろうか、それを俺は理解することができない。だがそれを理解できないことが俺の唯一の取り柄だと思っている。他者を虐げていい理由なんてこの程度の世界にはない。

 だが俺自身が無職として相応のストレスを感じていたのは事実で楽になるために他者を虐げることもできたかも知れない。でもしなかった、ただ嫌われるのが怖いだけのエゴかも知れないが人を傷つけて得た安心に果たして価値はあるだろうか。

 考えてばかりいられない。俺は次々くるゾンビを剣で両断しパージで浄化をしていく。ゾンビは土からは這い出てくる。ゾンビに噛まれても感染することはないが細菌が傷口から混入するので数日は発熱で寝込むことになる。

 今の俺はパージで活躍できているが、前世の時は活躍できなかった。とにかく何かが足りなかったんだ。それは能力が足りなかったからか、運が足りなかったからか、勇気がたりなかったからか、多分全て足りなかったんだろう。

 異世界では能力と運がある。成功間違いなしかもしれない。いや残酷な現実を受け止める勇気と一歩踏み出す勇気がないと前世と同じように無為な時間を過ごしてしまうかも知れない。

 どうしたら異世界では成功できるだろうか。堅実な努力をするべきだろうか。アンデットに脅かされた世界を救うこと使命にするべきだろうか。人より劣っている堅実な努力に価値はあるのだろうか。惨めな思いをするだけではないだろうか。世界を救うことを本当にできるのだろうか。今の俺の力では到底無理なように思われる。

 俺はどうすれはいいのだろうか。どうしたら人生を謳歌できるだろうか。もっと自分自身と向き合う必要がありそうだ。