勇者ゼルの冒険9
魔王ゾンビマスターの斬撃をもろに喰らう。俺の鎧は砕け散り、血潮が飛ぶ。圧倒的な強さを前に俺とクレナは何もできずにいた。ゾンビマスターは闇魔法を使い、闇魔法を帯びた斬撃飛ばし俺たちは逃げ場を失っていた。斬撃は魔城に柱を壊した、高いところにある窓から月明かりが差す。
クレナが氷魔法で応戦する。闇の斬撃を氷のつぶてをぶつけて無効化する。そも攻防は苛烈を極め最後には闇の斬撃がクレナを切り裂いた。クレナは後方に飛ばされ倒れた。
「クレナ!!」
俺は倒れたクレナを抱えた。
「私はもう戦えそうにないわ、私の魔力を使って」
クレナはそう言うと手を握り魔力を俺にくれた。その魔力は俺にとんでもない力をくれた。その力で俺は渾身の攻撃を放つ。
「パージ・ジャッチメント」
俺とクレナの魔力をこめた。斬撃が凄まじい速度と威力でゾンビマスターに直撃した。
「やったか?」
俺はとてつもない威力でゾンビマスターを倒せたかもしてないと思った。
「ふははは、そんな攻撃でこの私がやられるとでも思ったか?」
魔王ゾンビマスターは無傷でそう言った。身に待とう外套すら傷一つついてなかった。
「どうして傷一つついていない!?」
「私は無敵なのだよ、不死であり故に不老だり故に無敵なのだよ、お前も私の糧となりたまえ」
そう言うとゾンビマスターは両手を掲げ闇のエネルギーを頭上に生み出した。
「このエネルギーはこの世の闇を具現化したもので、この闇に飲み込まれたら君は悪に飲み込まれ魔物になり私の使い魔になるであろう」
そしてその闇のエネルギーが俺を飲み込んだ。逃げる余地はなかった。そのエネルギーはそこにあるようで実のところどこにでも存在しているようだった。
「ここはどこだ?」
俺は誰もいない真っ白な空間で問う。
「ここはお前の心だ」
邪悪な顔つきをした俺が現れそう言った。
「どうしたら魔城に戻れる?」
「お前は戻れない」
「なぜ」
「お前は俺に勝てないからだ」
「なぜ戦う必要がある」
「お前が俺を受け入れないからだ」
「邪悪な心を受け入れるわけにはいかない」
「お前が俺を認めない限りお前は自己の矛盾に苦しみ、自己を否定して自尊心がなくなり絶望に溺れるだろう」
邪悪な俺がそう言うと黒い水が俺を飲み込み俺は溺れた。
目を覚ますと目の前には邪悪な俺がいた。
「俺を受け入れる気になったか」
邪悪な俺がそう言った。
「受け入れない戦い続ける、感情は制御するもの、欲望は調和するもの、自己は高めるもの、絶望は乗り越えるもの」
俺は元いた場所に戻ってきた。